人間は、時間の経過とともに身体に変化をもたらす加齢現象があり、成熟期以降はこれを老化といいます。その過程で病気等で老化が進行することを病的老化、時間の流れのまま老化することを生理的老化といいます。さて、高齢になり日々の生活のQOL(生活の質)を下げるのは、病的老化よりも生理的老化です。すなわち、筋肉がひ弱になったり、認知機能が低下したり、栄養不足になったり、徐々に自立を妨げ、要介護状態へと導いていきます。この状態のことを老年症候群といい、まさに介護認定を受ける危険性がある人をロコモティブシンドロームといいます。その状態に進行(身体が虚弱になる)する過程をフレイルといいます。フレイルを遅らせるためには、食事をしっかりとり、適度な運動と積極的な社会活動が有益といわれています。我々は、高齢になり病気に焦点が向きがちですが、このような老年症候群の進行を妨げながら、自立した生活機能を長く保ち、生活の質を高めておくことを重視しなければなりません。
高齢者の心理は、友人、配偶者等の死別、退職等による社会的役割の喪失、自身の肉体的衰え等から自立できない不安が覆います。そのために、6つの要因、自己受容・環境適応能力・人生における目的・人格的成長・自律性・積極的な他者との関係を築く心理的成熟を求めることが必要です。そして、記憶力も短期記憶より長期記憶が低下するため、忘れない仕掛け作りも必要です。なお、過去の記憶では20歳代の記憶を思い出すことが多く、レミニッセンス・バンプといいます。さらに注意力も低下しますし、探し物を見つけられなくなったりします。
高齢者の知能は、新しい環境に適応しようとする流動性知能(動作性)は低下していきますが、学習によって発達を続ける結晶性知能(言語性)は比較的維持されます。
認知症は、アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・その他に区分されます。認知症の症状は、「認知障害」と「行動・心理症状」に区分されます。認知症患者の介護を困難にしているのは行動・心理症状です。なお、いきなり認知症になるのではなく、軽度認知障害の段階で気づけば予防できる可能性があります。
うつ病は、睡眠障害・食欲不振・異性への関心が消え・人との会話意欲がなくなります。兆候が見えたら早期受診が必要です。